猫に薬を飲ませたい! 嫌がらずに飲ませるコツ
2018/07/12
vol.007
猫に処方された薬、うまく飲ませられず苦労したことはありませんか? また飲んだと思っていたら、実は吐き出していたということもあります。中には薬を飲ませようとすると、気配を察して逃げ回る猫もいます。
しかし病気を治したり、体調を整えたりするためにも薬はしっかり飲ませたいですよね。そこで、猫に薬を飲ませるコツや注意点を、100名の獣医師に伺いました。
薬の苦手な猫はどのくらいいる?
「薬が苦手な猫、うちの子だけ?」と悩んでいる方もいるかもしれませんが、薬の投与に悩んでいる飼い主さんは意外と多くいます。
かなりの猫が薬で苦労している様子がわかります。80%以上という回答もあり、猫はあまり薬を飲むのが得意ではなさそうです。
猫の中には、薬がうまく飲めないために適切な頻度や期間で投薬をすることができないことがあります。そのような猫の割合は、最も多い回答が「20-40%未満」、続いて「40-60%未満」と、それほど少なくない印象です。
今回は、獣医師100名に「錠剤」「粉薬」「液体」「カプセル」の4種類の形状それぞれの飲ませ方について伺いました。猫は一度嫌な思いをすると、なかなか薬を飲んでくれないこともあります。獣医師の意見を参考にして上手に薬を与えるコツを学んでいきましょう。
猫に錠剤を飲ませるには、どんな方法がある?
どの方法も「どちらともいえない」が30%弱から40%近くあります。猫の性格などにもよって向き不向きがあることが考えられます。
例えば、「錠剤を細かく砕いてドライフードにかける」という飲ませ方は、多くの獣医さんが「うまくいきにくい」という回答した一方で、少数ながら「うまくいく」という回答もあります。
それほど薬に抵抗のない猫や、あまり味のない薬であれば、ドライフードにかけても気づかずに飲んでくれる可能性があるでしょう。
テクニックで飲ませてみる
- 愛知県
臨床経験:11-15年
得意な診療科:一般内科, 内分泌・代謝疾患, 皮膚科- ドライフードをふやかしその中に粒を入れ、一人に前足を押さえてもらい、真上を向けた状態で喉の奥に落としている。
ドライフードをふやかす、また2人で行うという方法ならうまくいきそうですね。
抵抗される心配がある場合は、まずウェットフードに細かくした錠剤を混ぜたり、隠したりして与えてみましょう。
また、「口を開けさせて飲ませる」というストレートな方法の意見もありました。
この方法にはコツがあるようです。
- 東京都
- 喉の奥に置いた後に少し口を押えて上向きにする。
- 茨城県
臨床経験:26-30年
得意な診療科:皮膚科, 一般内科, 外科- 口を開けさせるときに喉をまっすぐに伸ばして、舌の中心部をめがけて落とし、嚥下が確認されるまで頭部を上向きのまま保持。
専用の機器を使用した場合
また、専用の機器の使い方やコツも聞いてみましょう。
- 滋賀県
臨床経験:16-20年
得意な診療科:歯科・口腔外科, 眼科, 内視鏡科- 専用の機器をつかう。
- 宮崎県
臨床経験:21-25年
得意な診療科:一般内科, 内分泌・代謝疾患, 眼科- 保定の指導(頭部の頬骨のつかみ方)が重要。投薬器・ピンセット等にて、舌の奥に挿入後、水を飲ませる。
何かと混ぜて与える場合
何かに溶かして与える方法も有効です。シンプルにお水でもOK。
お水では嫌がる場合は甘いシロップに溶かしましょう。
- 兵庫県
- 粉にして糖液に混ぜる。
猫が大好きなおやつに混ぜて与えるのもよい方法です。
- 岡山県
臨床経験:11-15年
得意な診療科:総合診療, 皮膚科, 循環器科- 投薬補助トリーツで錠剤をくるんで直接飲ませると、錠剤そのままよりも拒否されにくい。市販の液状おやつに、粉にして混ぜると相当数がうまく飲める。
- 岐阜県
- チーズなど好きなものに埋め込む。
猫に粉薬を飲ませる場合は、どうしたらよい?
粉薬においても、「どちらともいえない」という意見が多くありました。
上位3つに挙がった「水に溶いてシリンジで飲ませる」「ウェットフードに混ぜる」「猫用ミルクに溶いてシリンジで飲ませる」という回答も、同意意見は半数以下です。
ミルクに混ぜるのもよさそうですが、
「指に付けて舐めさせたる」「ドライフードにかけてみる」などの方法を試し、うまくいかないようでしたら、他の方法で与えてみましょう。
粘り気のあるものと混ぜてみる
錠剤を砕いたときと同様、シロップに混ぜるのもよいですね。
- 滋賀県
臨床経験:11-15年
得意な診療科:腫瘍科, 血液学, 循環器科- シロップに混ぜて飲ませる。
また、「フードに混ぜてしまう」という手もあります。フードの味にまぎれて、食べさせることができそうです。
- 愛知県
臨床経験:16-20年
得意な診療科:一般内科, 内分泌・代謝疾患, 皮膚科- フードに混ぜ食べさせるか、だめならフードに混ぜたものを団子状にして、飲ませている。
チューブ入りの猫用サプリメント、市販の液状おやつ、バニラアイス、はちみつや練乳といったものに混ぜると飲ませやすいようです。
- 神奈川県
臨床経験:26-30年
得意な診療科:外科- 少量のバニラアイスに混ぜてあげる。
- 山口県
- 猫用チューブ入りサプリメント等に混ぜて強制的に。
ポイントは、粘り気のあるものに混ぜることと、猫が飲みやすいようにすることです。
オススメの塗るポイントは?
鼻の下や、歯茎、上あごの少し奥に塗ってみましょう。
- 大阪府
- 市販の投薬補助チューブに混ぜて歯茎に塗る。
- 岡山県
臨床経験:11-15年
得意な診療科:総合診療, 皮膚科, 循環器科- 市販の液状おやつに混ぜる。シリンジで飲ませるなら、上口蓋の少し奥を狙うと飲んでくれやすい。
- 広島県
臨床経験:16-20年
得意な診療科:総合診療, 腫瘍科, 放射線科- 蜂蜜や練乳などの粘りけのある液体にといて、鼻の下に塗ると勝手になめる。
液体の薬が処方された場合は、どのようにして飲ませる?
猫によってはうまくいかない可能性もありますが、まずはそのままシリンジで液体の薬を口の横から少しずつ与えてみましょう。すんなり飲んでくれる可能性が高いです。
- 東京都
臨床経験:31-35年
得意な診療科:栄養学, 皮膚科, 消化器科- シリンジやスポイトなどサイズを試す。
さらに味があると飲みやすいようです。市販の液状おやつなどを使ってみてはいかがでしょうか。
- 秋田県
- 市販の液状おやつに混ぜる。
薬を与えるときは、焦らずゆっくり与えるようにしましょう。
- 千葉県
- 口のわきからゆっくり入れる。
カプセルの薬が出たときはどのような方法がいい?
提示した方法は、どれもあまり多くの同意をいただけませんでした。ただ、うまくいく場合もあるので初めての場合は試してみましょう。食欲がある場合なら、フードに混ぜる方法は有効かもしれません。
混ぜるだけではなく、口に入れてあげると与えやすくなります。
- 愛知県
臨床経験:16-20年
得意な診療科:一般内科, 内分泌・代謝疾患, 皮膚科- フードに忍ばせて、口に入れている。
また猫の好きなものや市販の液状おやつ・投薬補助トリーツを使ってみましょう。
- 東京都
- 市販の液状おやつチュールと一緒に食べさせる。
- 岡山県
臨床経験:11-15年
得意な診療科:総合診療, 皮膚科, 循環器科- 苦いものが多いので、マーガリンとかバターのような脂っこいものの中に混ぜ込んで与える。
やはり、猫の歯茎や鼻の下に付けてあげるとうまくいきそうです。
- 大阪府
- カプセルの中身を市販の投薬補助チューブに混ぜて歯茎に塗る。
- 広島県
臨床経験:16-20年
得意な診療科:総合診療, 腫瘍科, 放射線科- 蜂蜜や練乳などに中身をといて鼻の下に塗る。
道具を使って飲ませる方法もあります。かかりつけの獣医師に、使い方やコツを教わるといいですね。
- 沖縄県
臨床経験:26-30年
得意な診療科:一般内科, 皮膚科, 外科- インプッターを使って強制投与する。
その他、「猫が飲みやすい薬を選択する」というご回答もいただいています。薬に苦味があってうまくいかない場合や、抵抗される場合は一度相談してみましょう。
- 和歌山県
- 中身の苦くない薬を選択する。
- 山口県
- カプセルはなるべく使わない。
猫に薬を与えるときはどのようなことに注意する?
猫に薬を与えるとき、他にはどのようなことに注意すればいいのかについても伺いました。
まずは飲ませる際の体勢や、薬について工夫してみましょう。
- 愛知県
臨床経験:16-20年
得意な診療科:一般内科, 内分泌・代謝疾患, 皮膚科- 一人に前足を押さえてもらい、真上を向けた状態で喉の奥に落としている。
- 茨城県
臨床経験:26-30年
得意な診療科:皮膚科, 一般内科, 外科- 口を開けさせるときに喉をまっすぐに伸ばす。
ためらわず、あまり時間をかけないことも大切ですね。1つの方法でうまくいかなかったら、違う方法にチャレンジしてみましょう。
- 埼玉県
臨床経験:11-15年
得意な診療科:一般内科, 循環器科, 総合診療- 苦い思いをさせずに一気に喉に入れることが大事だと思います。
- 宮崎県
臨床経験:21-25年
得意な診療科:一般内科, 内分泌・代謝疾患, 眼科- 頭部の保定(頬骨)が重要。1種類の投与法だけであきらめないでほしい。
薬の投与はしっかり行いたいですが、やはり無理は禁物です。よだれが出たら、一度休憩しましょう。
- 北海道
- 涎(よだれ)が出始めたらいったんあきらめて時間をおいてやりましょう。
猫に抵抗されて、飼い主さんが噛まれることも考えられます。気を付けて与えましょう。
- 宮城県
- 飼い主が咬まれないよう指導する。
薬を飲んだと思っても、本当に飲んだか確認が必要です。吐いているようだったり、うまくいったか不安なときは、獣医師に早めに相談しましょう。何よりも「獣医師の指示に従うこと」が大切です。
まとめ
猫に薬を飲ませる際、猫の性格や状況によってはうまくいかないことがあります。まずは獣医師の指示をしっかり聞いておくこと、その上で
猫の体勢に注意し、市販の液状おやつや市販の投薬補助チューブ、投薬補助トリーツなどをうまく利用して与えましょう。どうしてもうまく飲ませられないときは無理をさせず、獣医師に早めに相談するようにしましょう。