犬の熱中症対策 どんな環境での散歩が危険?
2018/08/06
vol.010
猛暑が続く夏の季節、やはり気になるのは「犬の熱中症対策」です。
犬を散歩させたいとき、どのような環境に気を付けるべきなのでしょうか。犬の熱中症の対策や応急処置について、獣医師100名に伺いました。
犬の散歩、どんな環境の場合は控えるべき?
100名の獣医師に伺ったところ、8割以上の先生が「気温が30度以上」の場合は、犬の散歩を控えるべきと答えられました。そのうち3割ほどは「27度以上」で控えるべきという回答でした。気温30度未満の日であっても、犬の様子に十分注意を払う必要がありそうです。
さらに、犬の散歩は気温だけにとらわれず、ほかの条件にも十分に注意が必要です。
- 宮崎県
臨床経験:11-15年
得意な診療科:皮膚科,外科,循環器科- 単純に気温ではなく、急な変化や湿度、晴れ曇りなどの気候の条件と犬自体の年齢、体調なども考慮しないといけないと思います。
それでは、具体的にどのような環境下だと熱中症を発症する可能性があるのでしょうか。犬の散歩で、気温以外に注意すべきことについて、さらに詳しく獣医師の皆さんに伺いました。
最低気温25度以上は要注意!
- 千葉県
臨床経験:21-30年
得意な診療科:皮膚科,泌尿器科,歯科・口腔外科- イヌは人と違い体表から汗で体温調整ができません。 犬種、年齢差もありますが、外気温が28℃を超えたならば散歩はやめるべきです。
- 静岡県
臨床経験:21-25年
得意な診療科:栄養学,総合診療,東洋医学- 最高気温ではなく最低気温が25度を超えたら、いつでも熱中症発症の危険がある。暑さ対策以前に室内トイレトレーニングを行うべき。
気温30度未満の散歩でも、犬が走り回ることで体温が上がったり、水分不足になることが考えられます。最低気温が25度以上の場合は、犬の熱中症に注意が必要です。
外に散歩に行かなくてもトイレができるよう、室内トレーニングを行うことが大切ですね。
気温だけでなく湿度にも注意
- 埼玉県
臨床経験:6-10年
得意な診療科:総合診療,皮膚科,一般内科- 湿度が高い場合は気温が低めでも熱中症の危険があります。4月5月でも注意が必要です。
季節が夏でなかったとしても、湿度が高い日の散歩は熱中症に十分気を付けましょう。
早朝・夜間の散歩は?
- 埼玉県
臨床経験:6-10年
得意な診療科:歯科・口腔外科,皮膚科,一般内科- 散歩の時間帯を工夫しましょう。朝ならば太陽が昇りきる前の5時台、夕方18時頃はまだまだ地面は暑いので太陽が沈んでしばらく経った21時以降がおすすめです。
- 埼玉県
臨床経験:6-10年
得意な診療科:総合診療,皮膚科,一般内科- 早朝、夜間の散歩でも条件によっては危険があります。湿度の高い日は特に注意してください。
気温が低い季節や、比較的気温の低い早朝夜間であっても、条件によっては熱中症発症のリスクがあります。水分補給や日陰での休憩を心がけましょう。
日中のアスファルトはアツアツの鉄板!
- 埼玉県
臨床経験:21-25年- 30度を超える中での散歩は、熱中症になる可能性があるので控えて下さい。アスファルトの温度は、非常に熱くなっていてやけどする可能性があります。
日中のアスファルトの温度は、50~60℃に達すると言われています。
肉球のやけどを防ぐためにも、日中のアスファルトの散歩は避け、芝生か土の上を歩くようにしましょう。
また、犬は人間よりも地面からの距離が近いため、路面温度を気にかけましょう。
- 鹿児島県
臨床経験:11-15年
得意な診療科:一般内科,皮膚科,歯科・口腔外科- 地面に近い部分の気温は、プラス5℃。犬の高さで温度を感じたり、道路を触ってから散歩に行っていいか判断してほしい。
犬種や個体差から総合的に判断を
- 北海道
臨床経験:16-20年
得意な診療科:総合診療,外科,一般内科- 心疾患を抱える犬は、特に暑い時間は避ける。
- 神奈川県
臨床経験:6-10年
得意な診療科:総合診療,一般内科,外科- 犬種や健康状態によっても散歩を控えた方がよいかどうかは変化します。犬種で言うと特に短頭種は要注意です。また呼吸器や循環器に問題のある子も要注意です。また人と同じで気温だけでなく、湿度も影響しますので、総合的に判断頂きたいです。。
気温が低い季節や、比較的気温の低い早朝夜間であっても、条件によっては熱中症発症のリスクがあります。水分補給や日陰での休憩を心がけましょう。
獣医師が勧める「犬の熱中症対策」は?
獣医師に伺ったところ、「クールマットなどの暑さ対策製品を置く」「トリミング(サマーカット)を行う」などの対策よりも、「クーラーで温度・湿度調節をする」というシンプルな対策が最も多く同意を得られました。
熱中症対策にエアコンは必須
- 東京都
臨床経験:21-25年
得意な診療科:総合診療,一般内科,歯科・口腔外科- 温湿度計を犬の生活環境中に設置する。 決してヒトの感覚で判断しないこと。
人間にとって快適な室内温度と、犬にとっての快適な室内温度には差があります。人間が少し肌寒いと思う程度の温度が、犬にとっての快適な温度です。
- 兵庫県
臨床経験:1-5年
得意な診療科:内分泌・代謝疾患,皮膚科,歯科・口腔外科- 車は予めクーラーで適温まで(ヒトが乗るとやや寒いと感じるぐらいまで)下げておく
- 北海道
臨床経験:6-10年
得意な診療科:外科,眼科,救急救命科- 未だに車の中で犬を留守番させているのを見かけます。危険だからやめてください。
犬を車に乗せる際は、予めクーラーで犬の適温まで車内温度を下げてあげましょう。
エンジンをかけたままだとしても、車内に犬を放置することは大変危険です。
室外飼いは要注意!
- 神奈川県
臨床経験:6-10年
得意な診療科:総合診療,一般内科,外科- 自分が熱中症になりそうな環境下に飼われているワンちゃんがいないかをまず考えて頂くと良いと思われます。
室外飼いの場合は、日陰を用意しましょう。暑い時期だけ、一時的に玄関に入れてあげるのも良いでしょう。
冷えたものを与えすぎるのはダメ
- 東京都
臨床経験:11-15年
得意な診療科:総合診療,一般内科,循環器科- 熱中症には空調管理と飲水。夏バテ対策には冷えたものを与えすぎない。
犬の熱中症の症状は?
熱中症は、命に関わることもある病気です。初期症状からはやく気づき、早急に対処しましょう。
初期症状
荒い呼吸がおさまらない、体温が高い、ふらふら歩く、よだれが大量に出ている など
重度の症状
下痢、嘔吐、けいれん、意識消失 など
初期症状に加え、重度の症状が見られる場合、すぐに応急処置を行い、一刻も早く動物病院へ連れて行きましょう。
熱中症の応急処置とは?
涼しい場所に移動させ、獣医師の指示を仰ぐ
- 愛知県
- すぐに病院へ連絡し指示を仰ぐ
熱中症が疑われたら、まずは犬を涼しい場所に移動し、獣医師の指示を仰ぎましょう。「熱中症なのかどうか」「持病が有るか無いか」で、応急処置が逆効果になることもあります。
ひたすら体を冷やす
- 東京都
臨床経験:6-10年
得意な診療科:皮膚科,神経科,栄養学- とにかく、体を冷やす。保冷剤があれば、腋や頚部、なければ全身を早急に冷やす。
- 埼玉県
臨床経験:6-10年
得意な診療科:一般内科,皮膚科,循環器科- ビショビショに濡らしたバスタオルをかけて冷風を送り、すぐに動物病院へ連絡してください。お車で移動の際はエアコンはMAXで。
犬の体を冷やす方法として、「常温の水を濡らしたタオルを犬の体にかけて送風する」「保冷剤を脇と首にあてる」などの方法が推奨されます。
体を冷やすことが大切ですが、氷水や水風呂で、急速に体を冷やすことは逆効果です。体温計で直腸温を測定しながら行ってください。目安として、犬の平均体温の39度ぐらいまで下げましょう。
できるだけ早く病院へ!
- 北海道
臨床経験:16-20年
得意な診療科:総合診療,外科,一般内科- 出来るだけ早く体を冷やし、電話連絡した上で、速やかに来院する
- 佐賀県
臨床経験:6-10年
得意な診療科:循環器科,一般内科,内分泌・代謝疾患- 様子を見ずに、すぐに病院に連れて行くこと。
まとめ
犬の散歩は、気温が30度未満の日であっても、湿度や路面温度など、散歩の条件に十分気をつけましょう。
熱中症対策で重要なことは、「空調管理」と「水分補給」です。室外飼いの場合は、日陰を作るなどして涼しい場所を用意してあげましょう。
熱中症の応急処置として重要なことは、以下の3つです。
1.かかりつけ医に連絡し指示を仰ぐ
2.すぐ病院へ連れて行き、受診する
3.病院につくまでの間、水を与え、水や濡らしたタオルで体を冷やしてあげる
犬は人間よりも暑さに弱く、人間のように自分で暑さから逃げることはできません。熱中症は最悪死に至る恐ろしい病気ですが、飼い主の適切な対策によって予防することが可能です。
暑い季節でも、ぜひ愛犬と楽しい思い出を重ねていきたいですね。