猫の爪切り、安全にきれいに切るコツは?

2018/09/28

vol.013

家で飼っている猫の爪は、猫自身、そして飼い主さんのためにもきれいに切っておきたいものです。しかし、ケガをさせたらどうしよう、切りすぎたらどうしようと、なかなか爪を切ることができない飼い主さんもいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は獣医師100名に、「猫の爪切り」の適切な頻度やコツについて伺いました。

爪切りに苦労する猫、どのくらいいる?

獣医師100名に、爪切りに苦労する猫がどのくらいの割合でいるか伺いました。「2-3割」という回答が最も多く、半数近く占めています。

猫のとがった爪は当たるだけでも痛いですし、多頭飼いの場合は、猫同士で傷つけてしまう可能性もあります。また、家具や壁に傷がつくこともあるため、できれば切りたいものです。爪切りは定期的に行ったほうがいいのでしょうか。

「とても大切」「大切」を合わせると79%と多くの獣医師が、定期的な爪切りが大切であると回答しています。
「どちらともいえない」「それほど大切ではない」というご意見もありますが、これは定期的な爪切りの大切さは、爪とぎの習慣や年齢など「猫による」ということが理由と考えられます。

獣医師が推奨する爪切りの頻度は?

具体的な爪切りの頻度について、獣医師100名に伺いました。

爪切りはだいたい「月に一度程度」

最も多い回答が「月に一度」で49%です。また「猫による」という回答も28%あるので、猫の年齢や活動も考えて、だいたい月に一度程度が目安になりそうです。

大阪府
臨床経験:11-15年
得意な診療科:総合診療,一般内科,内分泌・代謝疾患
年齢や猫種にもよるが、最低ひと月に一回。
京都府
3週間に一度程度。

年齢やライフスタイルも考慮にいれましょう。

千葉県
臨床経験:6-10年
得意な診療科:総合診療,皮膚科,一般内科
年齢、猫のライフスタイルによっても異なってきます。
東京都
臨床経験:21-25年
得意な診療科:総合診療,循環器科,消化器科
猫によると思う。

猫によってはもう少しこまめに

猫によっては2週間に一度程度、さらにこまめに少しずつ切りたい場合は1週間に一度程度でもよさそうです。

愛知県
臨床経験:21-25年
得意な診療科:行動診療科,歯科・口腔外科,皮膚科
可能であれば2週に一度ぐらい、自宅で行うのが理想。

猫の爪が伸びてきて、気になったら切るというスタイルは猫とのコミュニケーションタイムに取り入れるといいですね。

千葉県
臨床経験:6-10年
得意な診療科:一般内科,総合診療,皮膚科
とがっていたら切る程度でいいと思います。
みんながやっていることが良いこととは限らないので、ご自宅の生活環境から爪を切ったほうがいいと思える場合には切ってあげてください。

習慣化することがポイント

猫の爪切りは習慣化することが大切というご意見もいただきました。

兵庫県
臨床経験:1-5年
得意な診療科:内分泌・代謝疾患,皮膚科,歯科・口腔外科
あまり長くなりすぎる前に切ること、習慣化してあげることがお家で飼育する上で大切。

爪切りに少しずつ慣らしていくことで猫も受け入れてくれそうです。

神奈川県
臨床経験:21-30年
得意な診療科:泌尿器科,放射線科,総合診療
初めのころは、先端を少し切るだけにして、週に1回くらいで慣らしていく。その後は月に1回、ないしは気になるときに行う。

猫の爪切りは無理をしない

つい完璧に切りたくなりますが、無理をしないで切ることがコツです。

東京都
臨床経験:11-15年
得意な診療科:一般内科,皮膚科
爪切りは一生必要なお手入れです。こまめに行うことも大切ですが、そのことにこだわりすぎて無理強いするとずっと爪切りが嫌いな猫になりかねません。行う時には猫の機嫌などを見ながら少しずつチャレンジしましょう。
岡山県
猫が許容できる範囲で少しずつ出来るだけ頻回に。

爪の生え具合や状態を見ることも大切です。

岐阜県
臨床経験:21-30年
得意な診療科:総合診療,歯科・口腔外科,皮膚科
爪の状態を見るだけでも重要です。

動物病院で切ってもらう方がよい場合も

「猫が嫌がる」「うまくできるかどうか心配」という場合は動物病院に行きましょう。

大阪府
臨床経験:21-30年
得意な診療科:皮膚科
自分でやって深爪にすると、猫はトラウマに成るので、やりにくい子はムリしないで、動物病院に来た方が結局は早道。

猫の爪の伸びる周期がわかると、病院に行くタイミングもわかります。
「猫が嫌がる」「うまくできるかどうか心配」という場合は動物病院に行きましょう。

山形県
臨床経験:21-30年
得意な診療科:皮膚科,眼科
一度伸び加減が分かれば、その後その周期で来院してもらう。

高齢猫の巻き爪は要注意

特に、高齢猫は巻き爪には気を付けましょう。高齢になると関節疾患などで爪とぎができなくなってくる可能性があるのですね。

東京都
臨床経験:6-10年
得意な診療科:総合診療,一般内科,皮膚科
高齢猫ちゃんは関節疾患などに伴い爪とぎをしないもしくは爪とぎをしていてもきちんと研げていない事があるので、若いねこちゃんよりも定期的に切る必要があると思います。 伸びすぎて肉球に刺さり化膿している高齢猫ちゃんが多く見られます。
北海道
臨床経験:11-15年
得意な診療科:一般内科,消化器科,循環器科
高齢になって爪とぎをしなくなってきたら定期的に爪切りをしたほうがよい。
愛知県
臨床経験:16-20年
得意な診療科:一般内科,内分泌・代謝疾患,皮膚科
一度、巻爪になると何度でも、肉球に刺さりますので早めに切ってあげてください。

高齢猫では、爪が肉球にささっていないか時々チェックをします。

大分県
臨床経験:16-20年
得意な診療科:総合診療,一般内科
高齢のネコで爪とぎができないネコは2-3か月に一回は爪切りをする 巻き爪が肉球にささってないか確認する。
東京都
臨床経験:31-35年
得意な診療科:総合診療,内分泌・代謝疾患,一般内科
年齢がいくと、巻き爪となり、肉球にくいこむことが多いので日頃から注意しておく。

猫の爪の切り方は?

「2人で協力して行う」方法は、85%の獣医師から同意の回答をいただきました。「猫を後ろから抱っこして1人で切る」方法に同意されている獣医師は25%程度ですので、できれば2人で協力して猫の爪切りを行うのがよさそうです。

切る際は「バスタオルなどでくるむ」「袋状のものに入れる」などして猫を落ち着かせ、「一度に済ませようとしないで少しずつ切る」と、猫にも飼い主さんにも負担を減らすことができそうです。

これらの方法には少数ながら、同意されない獣医師もいます。猫によっては落ち着かなかったり、うまくいかなかったりすることもあるということを頭に入れておきましょう。そして、爪を1人で切る状況だったり、または爪切りを猫が嫌がったりする場合は「無理をせず動物病院で切る」ほうが安心です。

日頃から猫の身体や足先・肉球にタッチ

日頃から猫の身体に触れる、足の先、肉球に触れるということをやっておくことは、爪の伸び具合のチェックだけでなく、爪切りをうまくやることにもつながるのですね。

熊本県
日頃から体を触ること(ボディータッチ)をしておいて慣れる練習をする。
神奈川県
臨床経験:21-30年
得意な診療科:泌尿器科,放射線科,総合診療
まず、切る前に肉球を触る(ある程度強めに握るように)ことから行う。その際には、爪を根元から押すことも同時に行う。

猫の身体の構造を理解して切ることも必要ですね。

静岡県
臨床経験:6-10年
得意な診療科:泌尿器科,一般内科,総合診療
骨格を理解して切りましょう→猫の横から手足を引っ張ったら猫も痛がります。切りづらくても、手足は体幹の真下にある状態で爪を切ることを心がけましょう。

子猫のときから習慣に

子猫なら小さい時からの習慣づけは大切です。

愛知県
臨床経験:21-25年
得意な診療科:行動診療科,歯科・口腔外科,皮膚科
小さい時から定期的にして、慣れさせることが重要。

深爪は要注意

さらに深爪しないよう気を付けます。無理に切らないようにしましょう。

埼玉県
臨床経験:1-5年
得意な診療科:皮膚科,循環器科,一般内科
深爪を一度でもすると嫌になってしまうことが多いので、浅いくらいでいいですよ。 また、日頃から手の先端を触っていると、爪を切られる際のストレスも減ると思うので、お家でやって見てください。
埼玉県
あまり短くしすぎない。

爪切りも切れ味の良いものを用意します。

兵庫県
臨床経験:1-5年
得意な診療科:内分泌・代謝疾患,皮膚科,歯科・口腔外科
新しく切れ味の十分な爪切りを使用。

無理はしない

やはり「無理をしないこと」が大切です。難しいと思ったら動物病院で切ってもらいましょう。

広島県
無理にやろうとすると嫌がってますますできなくなる、猫にも嫌われてしまうため、病院でするべき。
埼玉県
臨床経験:11-15年
得意な診療科:一般内科,循環器科,総合診療
家で切ると嫌がり動物病院でも切れなくなるので、必ず病院でするようにする。

猫も年齢があがるにつれ、猫の性格も変わるかもしれません。

東京都
臨床経験:6-10年
得意な診療科:総合診療,一般内科,皮膚科
どうしても嫌がるようならプロに任せるとよいかもしれません。 小さいころは嫌がっても年齢が上がるにつれすんなり切らせてくれるようになる子もいるので、あきらめずチャレンジしてほしいと思います。

猫と飼い主さんの関係も大切に

猫と飼い主さんの信頼関係も大切にして、無理をしないようにしましょう。

大阪府
臨床経験:21-25年
得意な診療科:一般内科
人がけがをしないように、信頼関係を失わないように。

後ろ足から切る

切るときは後ろ足から始めてみましょう。

埼玉県
臨床経験:1-5年
得意な診療科:泌尿器科,一般内科,総合診療
後肢からはじめた方がうまくいきやすいように思います。

少しずつ切る

いっぺんに切ろうとせず、少しずつ切ることがコツです。

神奈川県
臨床経験:21-30年
得意な診療科:泌尿器科,放射線科,総合診療
無理せず、数ミリ程度切るくらいにすること。

慣れないうちは先端だけ切りましょう。

埼玉県
臨床経験:6-10年
得意な診療科:歯科・口腔外科,皮膚科,外科
一度出血させると、その後の爪切りが非常に難しくなります。 慣れない方は、爪の先端だけ切るようにする。

高齢の猫には要注意

高齢の猫については、普段ちゃんと爪とぎができているかどうか確認しましょう。

神奈川県
臨床経験:16-20年
得意な診療科:外科,一般内科,循環器科
高齢猫なら爪とぎができているかどうかチェックする。

伸びすぎると巻き爪になって肉球に刺さってしまいます。

東京都
臨床経験:16-20年
得意な診療科:一般内科,循環器科
特に老齢猫は伸びるとパットに刺さるので、自宅で無理であれば病院で切るべき。

高齢猫はもちろん、爪が伸びすぎる猫にも注意が必要です。

北海道
臨床経験:11-15年
得意な診療科:一般内科,外科,歯科・口腔外科
高齢猫は爪が伸びすぎて肉球に刺さります。痛みで歩けなくなるまで気づかないケースが多いですから、そうなる前に気づいてあげてください。 高齢でもないのに爪が伸びまくる猫は関節炎などの疾患を隠している可能性があります。猫の関節炎は自覚症状が不明瞭なことが多いので見落とされがちですが、痛みを隠しているだけなので気づいてあげてください。

外に散歩に出る猫の爪切りにも注意が必要です。よく外に行く猫は切りすぎないほうがよいでしょう。

静岡県
臨床経験:6-10年
得意な診療科:泌尿器科,一般内科,総合診療
二ヶ月以上放置すると、爪の先端が丸まって肉球に食い込んでしまう症例が多いです。最低でも二ヶ月に一回は爪を切りましょう。ご自宅で無理なら、病院やサロンで切ってもらいましょう。 なお、屋外へ行く猫ちゃんについては、頻繁に爪を切ると喧嘩で負けて大怪我を負ってしまう恐れが高いので、頻度を下げないといけない場合がありますのでご注意ください。

無理をせず動物病院で切ること

何よりも無理をしないことが大切です。嫌がるそぶりを見せるようでしたら、動物病院で切ってもらいましょう。

東京都
臨床経験:6-10年
得意な診療科:総合診療,消化器科,循環器科
無理はしないで、嫌がるなら病院で爪切りをしてください。

爪切りで出血した時の対応は

出血させないように注意しましょう。止血剤も常備しておくと安心です。

埼玉県
臨床経験:6-10年
得意な診療科:歯科・口腔外科,皮膚科,外科
出血させないこと。
北海道
臨床経験:11-15年
得意な診療科:一般内科,外科,歯科・口腔外科
止血剤は常備薬として持っていた方が良い。

血が出ると慌ててしまう飼い主さんも多いと思います。万が一出血させてしまった時の対応方法についても、100名の獣医師に伺いました。

「清潔なガーゼを当てて止血する」ことに、77%の獣医師から同意の回答をいただきました。まずは慌てずに止血することがよさそうです。

「血が止まらなかったら動物病院に連絡して指示を仰ぐ」ことには、合わせて84%の獣医師が同意しています。血が止まらない場合は連絡するほうがよいですね。

「すぐに動物病院に連絡して指示を仰ぐ」「出血したらすぐに猫を動物病院に連れて行く」に関しては、いずれの対応にも同意されない獣医師もいらっしゃいますので、かかりつけの獣医師に日頃からどういう対応をすればよいか確認しておくといいですね。

出血した時の対応や処置についてもご意見を伺いました。

慌てない・心配しすぎない

血がでても、まずは慌てないようにしましょう。

埼玉県
臨床経験:1-5年
得意な診療科:泌尿器科,一般内科,総合診療
凝固系がしっかりしている子であれば血が止まらないことはないので過剰に心配しすぎない。
滋賀県
臨床経験:11-15年
得意な診療科:腫瘍科,血液学,循環器科
よほど深く切ってなければ問題ないことが多いと思います。

しっかりおさえて止血をする

気持ちを落ち着かせて止血をします。

神奈川県
臨床経験:21-30年
得意な診療科:泌尿器科,放射線科,総合診療
慌てないでしっかりと抑えてみる。冷水を湿らせたガーゼを使うと止まりやすい。
岐阜県
臨床経験:21-30年
得意な診療科:総合診療,歯科・口腔外科,皮膚科
出血部位を生理用ナプキンで包むと良い。

止血剤を用意しておくのも〇

あらかじめ止血剤を用意しておくと、慌てずにすみます。

兵庫県
臨床経験:1-5年
得意な診療科:内分泌・代謝疾患,皮膚科,歯科・口腔外科
自宅で良くする場合は止血剤を購入してもらう、または小分けにして出す。
北海道
臨床経験:11-15年
得意な診療科:一般内科,外科,歯科・口腔外科
余程じゃなければ動物病院に着く頃には出血は止まってます。飼い主がパニックにならず、止血剤をつけるか数分圧迫すれば良いのです。だから止血剤は常備しておこう。

小麦粉や片栗粉も止血剤に

止血剤がない場合は、小麦粉片栗粉を付けることで止血ができます。

大阪府
臨床経験:11-15年
得意な診療科:総合診療,一般内科,内分泌・代謝疾患
応急処置として、片栗粉や小麦粉をつかって止血する。

マッチや線香で炙らない

ネットの情報にあるようですが、出血部分をマッチや線香で炙ることはやめましょう。

埼玉県
臨床経験:1-5年
得意な診療科:皮膚科,循環器科,一般内科
まずはさせないこと してしまった場合には3分間しっかり抑えて止血を試みる。 ネットに書かれているような、マッチや線香で炙るのはかわいそうなのでやめてください。

まとめ

猫の定期的な爪切りは必要だということがよくわかりました。少しずつ慣れさせながら切っていくと、うまくいきそうですね。特に高齢の猫は、巻き爪になりやすいので時々爪の伸び具合を確認してあげましょう。

万が一切りすぎて出血させてしまった場合は落ち着いて止血し、なかなか血が止まらないときは動物病院を受診しましょう。止血剤を用意しておくと安心です。

猫が爪切りを嫌がる場合や、一度出血させてしまった場合などは無理せず、動物病院に連れて行って切ってもらうと安心です。